第14章 僕のストーカー(逢坂紘夢)
次の朝。学校の廊下。
「おはようございます! 先輩っ」
聞き覚えのある声に僕は振り返る。
やっぱり。あの子だ。
名前…昨日鳴海に聞いた気がするけど忘れた。
今日も弁当包みを持っている。
もしかして…。
「お弁当です。先輩」
その子はニコニコしてその弁当包みを差し出す。
「え…どうしてまた? そんなことしなくていいって言ったのに…」
「美味しいって言ってもらえたから、私うれしくて…」
なぜか目を少しうるうるさせて、僕の顔を見上げる。
うーん…
泣きそうというよりは、嬉しそうだからまぁいいけど…
「まぁ確かに美味しかったよ、かなり。でも鳴海にもらったメモ用紙に書いたから、鳴海が気をきかせて書いたかと思われるか心配してたんだ。ちゃんと伝わっていたんだね」
僕は心配していたことを確認する。
「ふふっ、そんなのぉ…筆跡でわかりますよ」
その子はニッコリと笑う。
なんか怖っ。
「先輩の細かい好みが把握しきれてなくて…お口に合うか心配だったんです。でもよかった…。
おかずのリクエストがあったらなんでも言ってみてくださいね。では失礼します」
「あっ…」
その子は僕に弁当包みを押し付け、走り去っていった。
もう作らないでいいよ、って言いそびれたなぁ。