第14章 僕のストーカー(逢坂紘夢)
「何これ。僕がこんな物を使っていると思われたら嫌だな…」
鳴海が渡してくれたメモ用紙は、花柄のファンシーなものだった。
「演劇部は女の子が多いからね。こういうもので手紙を回すと上手くいくこともあるのさ。だいたい人に物をもらっておいて、その言いぐさはどうかと思うなぁ…」
「はいはい、すみません。ありがとうございます」
サラサラ…
『美味しかったよ』
僕はメモ用紙にそう書き込み、それを折り畳んで弁当包みに挟んだ。
「じゃあ悪いけど、これを頼んだよ」
「オッケー」
ふう、やれやれ。
弁当包みを鳴海に預けて、肩の荷が下りた。
あ、でも待てよ。
普段、鳴海が使っているメモ用紙を使ったから、鳴海が気をきかせて勝手に書いたメモと思われるかもなぁ。
……。
まぁいいか、そんなこと。
僕は時計を見る。
彼女は今頃どうしているだろう。
教室で友達とお菓子を食べているかな。
中庭でひなたぼっこでもしているかな。
ちょっと様子を見に行こうっと。