第14章 僕のストーカー(逢坂紘夢)
次の朝、僕はいつも通り彼女を見守りながら登校していた。
学校に着き、廊下を歩いてるとき
「逢坂先輩っ」
…聞き覚えのあるような声。
僕は振り返る。
やっぱり。昨日の子だ。
「…何か用?」
タイミングが悪いな。
彼女が教室に入るまできっちり見守りたいんだけど。
そんな僕の様子を気にすることなく、その子はニッコリ微笑む。
そして何か包みを掲げる。
「あの…先輩、お昼いつも購買か食堂だから…。私、お弁当作ってきたんです。よかったら食べてくださいっ」
「はぁっ?」
登校時間で人通りの多い廊下。
お弁当の包みを掲げる女子。
通り過ぎる人たちが興味深そうにチラチラ見ていく。
「あ、あのね。そんなことしなくていいんだよ。気持ちは嬉しいけど…しまって、それ。それは君が食べなよ…」
あぁ逃げ出したい。
この場から逃げ出したい…。
「私、自分の分は作って持ってきてるので…。これは先輩に受け取って欲しいんです…。迷惑だったら捨ててもらってかまいません…」
その子の顔が急に泣き出しそうになる。
わぁあ…。
「捨てたりなんかしないからっ。あの…ありがとう!」
僕は包みを奪い取り、その場から走り去った。
参ったな。
彼女の姿は完全に見失ってしまったし。
僕はA組の教室の前で、歩く速度をゆるめて彼女の姿を目で探す。
うん、いる。
無事、教室に着いたようだ。
僕は安心して自分の教室に向かう。