第13章 女神なんかじゃない(逢坂紘夢)
特にたいしたイベントもなくデートは進んだ。
夕方、帰る前に観覧車に乗る。
時間的に、もうそろそろ帰る時間。
寂しいな。何もなくても一緒にいるだけで楽しかった。
まあ、何かあったらもっと嬉しいんだけど。
目の前にひろがる夕焼け空を眺めて、私は小さくため息をつく。
「どうしたの、愛ちゃん。夕暮れの空を見てセンチメンタルになったのかな?
美し過ぎるものを見ると、吸い込まれそうというか…少し怖くなるときがあるよね。
まぁ、僕にとっては君のその美しい憂い顔がまさにそうだね…」
そう言って、彼が美しく微笑む。
彼の美しい微笑みが夕焼けに照らされて…。
逢坂くんは私を好きだって言ってくれるのに、なんでそんなに平然としていられるの?
好きなのに、眺めているだけで平気なの?
私は違う。
眺めてるだけなんてやっぱりイヤ。
私は好きなものは自分のものにしたい。
ガタッ
私は立ち上がり、向かいに座っている彼の隣に移る。
ぐらっと観覧車のゴンドラが揺れる。
「おっと…大丈夫? 急に立ち上がるからビックリした…」
支えようとして出したのだろうけど、私に触れない彼の腕の中に私は飛び込む。
彼が息を飲む音が聞こえる。
もうドン引きされてもいい。
私はこんな関係やっぱりイヤだから。