第13章 女神なんかじゃない(逢坂紘夢)
日曜。今日は逢坂くんとデート。
遊園地に来た。
お化け屋敷に入る。
これはチャンス!
「私、オバケ怖ぁい」
入る前にジャブを打つ私。
「大丈夫だよ。僕がついてるからね!」
彼が自信たっぷりに答える。素敵。
…
お化け屋敷の中を歩く。
「く…暗いね…」
暗闇の中の彼にアプローチする。
「そうだね…」
彼が答える。
違うでしょ! 手を繋ごうか? でしょ!
私はイラっとする。
「キャッ」
私はつまずいたフリして彼の手を握る。
「キャッ」
彼も小さく叫び声をあげる。
「ご、ごめん。何かにつまずいちゃったみたいで…。怖いからこのまま手を握っててもいい?」
暗闇の中、上目遣いで彼の顔を見上げる。
「い、い、いいよ。僕がついてるからね。大丈夫だよ」
よし、手を握った。後はタイミングを見計らって抱きついちゃう? ふふ…
私は頭の中でひそかに計画をたてる。
…
遊園地のお化け屋敷はたいしたことなくて、私は抱きつくタイミングが取れなかった…。
私は彼の手を握ったまま、トボトボとお化け屋敷を出る。
「あ、あの…愛ちゃん。もう大丈夫だよ。終わったからね」
彼が繋いだ手をチラッと見て言う。
「あっ…ゴメンね、私、手をこんなぎゅっと握ったままで…」
私は繋いだ手を離す。
本当はずっと握ってたかったんだけど。
「いいんだよ。少しでも君の役に立てたのなら僕は嬉しいんだ」
彼がニッコリと微笑む。
逢坂くんは私ともっと何かしたいとか思わないのかなぁ。