第13章 女神なんかじゃない(逢坂紘夢)
逢坂くんと私の交際が始まった。
まず朝は私を迎えに来てくれる。
「おはよう! 愛ちゃん」
「おはよう…あの、毎朝迎えに来てくれなくていいよ。逢坂くん遠回りだよね?」
「ううん。僕の部活があるときは一緒に下校出来ないし…。せめて登校だけでも見守らせて欲しいんだ」
「見守るって…別に何もないよ…」
私たちは並んで歩きながら話す。
「おっす! 愛、逢坂。朝から仲良いな」
後ろから歩いてきた斗真が私たちに声をかけて抜かしていく。
「ほら…朝からあんなのに遭遇するんだから。まったく気が抜けないよ…」
不機嫌そうに逢坂くんがつぶやく。
「別に、斗真は…ん…如月くんは単なる幼なじみだよ。もしかして逢坂くん、如月くんにヤキモチやいてるの?」
私は笑う。
「わかってないっ。君はわかってないんだよ! 君がどれだけ魅力的なのか…どんなに男を魅了させるのか…。大丈夫。これからは僕がついてるからね。ずっと…」
逢坂くんは自分の拳をぎゅっと握って熱弁する。
そうなんですか…
反論する隙もないので、私はただ頷く。
そして彼の横顔を見上げる。
綺麗な黒髪に隠された切れ長の美しい目。
形のいい唇から放たれる素敵な声。
こんな素敵な男の子と並んで歩けるなんて、私は幸せ。