第9章 ずっと一緒だニャ(雨宮久遠)
「もし、ぼくが…戻れの呪文を唱えなければ…。愛はずっと猫のまま…ぼくのそばにいてくれる?」
「ニャ…(どうしたの? 雨宮くん?)」
「そんなの嫌だよね。
友達と遊んで、勉強して、お母さんの作ったご飯食べたいよね。
ぼくにはわかる。
でも…でも、思っちゃうんだ。
どうしても、ずっと一緒にいたいって。
ぼくって自分勝手な悪い子だね…」
「ペロペロ…(雨宮くんは悪い子じゃないニャ)」
「ふふっ…僕をなぐさめてくれるの。ありがとう。ちょっと待ってね」
彼はにっこり笑って、私のカバンからノートを取り出し、『戻れ』の呪文を唱える。
……。
「もどっ…た?」
私は久しぶりに人語をしゃべる。
「うん」
彼が驚いた様子で頷く。
私は彼の膝の上に乗っかって、首に腕を回して彼にピッタリくっついてる自分に気づく。
「キャッ…」
「ふふっ…。愛、お姫さまみたい」
そう言って、彼は私の頬にチュッてキスする。
キャーキャーキャー…
私はそっと彼の隣に座り直す。
多分、顔真っ赤…。
「戻れてよかったね、愛」
彼が優しくニコニコ言う。
うん…でも…雨宮くん…
私は彼の顔をのぞく。
「ぼくのことを心配してくれてるの?」
私はコクリと頷く。
「愛は優しいね。でも大丈夫。
実はね、ぼくにはとんでもない秘密があるんだよ…」
彼は話し始める。