第7章 夏期講習(逢坂紘夢)
逢坂くんは藤城学園で私と同じ2年生。
クラスは違うけど、私のことを文芸部に誘ってくれたことがある。
逢坂くんもどこかあの辺の予備校に通ってるのかな。
知り合いのいない予備校に行くために、知り合いのいない街へ行くのが辛くなってきた私。
だけど、逢坂くんもあの街で勉強してるのかと思うと、少し気がラクになった。
…
予備校で小テストがあった。
結果は散々だった。
はぁ…頑張ってるんだけど、結果が出ない。
帰る準備をしながら落ち込む。
このまま帰りたくないな…。
どこかで気分転換したい。
でも、友達なんかいないし…
あ! そうだ。
今ならまだ間に合うかも…行ってみよう。
私はちょっと面白いことを思いついた。
……
確かこの時間、彼はこの角を曲がってくるはず。
…あれ? 来ないな。
今日は予備校ない日なのかな。
あ! 来た!
……
「逢坂くん!」
私は角を曲がって来た逢坂くんに声をかける。
「えっ? わっ…わぁっ! え? え? 愛ちゃん…。
あ…あの…す、すごい偶然…だね…?」
ふふ、すごくビックリしてる。
「うん。でも実はわたし、この辺で何回か逢坂くん見かけたことあって。逢坂くんもこの辺の予備校通ってるの?」
「あ…えっと。そうだよ」
私の質問に彼が答える。
「今から行くの?」
「う、ううん。帰る所だよ」
私は首を傾げる。
「でもこっち、駅の反対方向だよね」
逢坂くんの歩いていく方向を指差して私は言う。
「うん…。この先に大型書店があってね。そこをぶらぶらしてから帰るのが日課なんだ」
彼の言葉に私は頷く。
「わかる! なんか難しい勉強した後って気分転換したくなるよね!」
「うんうん」
彼もニッコリ笑って頷く。