第7章 夏期講習(逢坂紘夢)
はぁ…気が重い…。
夏休みに少し学力アップしようと思って申し込んだZ予備校の夏期講習。
思ってたよりハイレベルだった。
藤城ではそこそこ出来るつもりだった。
けど、校外の生徒が集まるこの夏期講習では、下から数えた方が早いみたい。
私は部活もやってないし、夏休み暇だし、校外の友達でも出来たらいいなぁとも思ってたけど…。
そんな雰囲気じゃなかった。
みんな必死で勉強している。
私だってもう高2だし、そろそろ志望校をきちんと決めて、しっかり準備しないといけないのはわかってる。
でも、来年は高3で受験生。
今年の夏はもう少し楽しみたかったな。
でも、親に結構な金額出してもらって通ってるんだから。
ちゃんと通って、少しは結果出さないと。
私は電車に乗って予備校に向かう。
…
予備校の授業が終わり、一人で駅に向かって繁華街を歩いてるとき、
あれ?って思う。
なんか知ってる人に会った気がするんだけど…。
振り返ってみるけど、知ってる人なんて誰もいない。
そういえば、昨日もそんなふうに感じた。
でも気のせいかな。
……
次の日。
予備校の帰り道、また同じことを思う。
振り返ってみると、一人の男の子の後ろ姿に目がとまる。
私と同じ高校生ぐらいの人。
でも、なぜ彼のことが気になったんだろう。
……
次の日の帰り道も。
やっぱり昨日と同じ人に目がとまった。
今日は彼が曲がり角を曲がるとき、横顔が見えた。
遠くて顔はよくわからなかったけど…。
あれ? 私あの人やっぱり知ってるような…。
……
帰りの電車でぼんやりしてるときに気がついた。
あ…!
私服だったからすぐわからなかったけど…
あの人…逢坂くんだ。