第5章 星の王子さま(雨宮久遠)
「これ…受け取ってもらえる? わたしが雨宮くんのために作った本だよ」
私は和訳を書いたノートも渡す。
「ありがとう。愛ちゃん」
彼はノートを受け取って、しばらくそれをみつめる。
そして顔を上げて、私の顔を見て言う。
「ぼくの大切なものは…きみだよ」
私の目から涙があふれてくる。
「わたしも…わたしも雨宮くんが好き…」
ちょっと涙声になったけど言えた。
彼がそっと私を抱き寄せる。
あたたかい…
雨宮くんの身体…あたたかいんだ…
涙が止まらない私を、彼が優しくよしよししてくれる。
そして、あたたかい彼の手が、私の頬に触れる。
私はちょっと顔を上げる。
泣き顔が恥ずかしいな…。
「可愛いよ。愛」
私は照れくさくてちょっと笑う。泣きながら。
「好きだよ。大好き」
そう言って、彼は私の唇に唇を重ねた。
柔らかい唇の感触が、私の心をあたたかくしてくれた。