第5章 星の王子さま(雨宮久遠)
私はその本を、家に持って帰って和訳することにした。
もしかして、図書館の外に持ち出したら煙になって消えちゃったりして…
とか心配したけど、そんなことはなかった。
自分の部屋の机に座り、辞書を引き和訳する。
文章自体はそんなに難しくない。
だけどちょっと不思議な内容。
まあ、魔法の書だから当然か。
それにしては宇宙船?とか出てくる。
子供向けの物語のような面白い内容で、訳しながらもちょっと夢中になる。
しばらく進めて気がつく。
この話、なんだか知っているような…。
私はスマホでちょっと思い当たるタイトルを検索してみる。
あらすじを読む。
やっぱりそうだ。
これ、『星の王子さま』だ…。
多分、星の王子さまを易しく子供向けの童話にした本なのかな?
それにしては、挿し絵もないし、真っ黒な表紙って…。
この本はいったいなんなんだろう。
……
次の日、午前中に図書館へ行く約束をしていたので行く。
「愛ちゃん! 何かわかった? 魔法の書…」
雨宮くんが私に駆け寄ってきて尋ねる。
私は答える。
「うん。でも、あれ、魔法の書じゃないかもしれない」
「えっ…そうなの?」
彼はちょっとがっかりした顔をする。
でも私はニッコリ微笑む。
「うん…でも…最後まで訳してみようと思う。そしてそれを雨宮くんに読んであげる。
だから…もうちょっと待ってて!」
「うん!」
雨宮くんもニッコリ笑って頷いた。