第5章 星の王子さま(雨宮久遠)
それは私たちが子供の頃、夢中で読んでいたファンタジー小説に出てくる魔法の書にそっくりだった。
私たちは子供の頃、何度も何度もその本について語り合った。
その頃、雨宮くんは病院に入院してた。
病院で私たちはその本のイメージを絵で描いてみたり、本に書かれていない場面や続きを想像しておしゃべりして楽しんだ。
…そんな大好きな本に出てくる重要なアイテム。魔法の書。
それが今、こんな所でみつかるなんて…。
「雨宮くん、これ、どこでみつけたの?」
私は彼に質問する。
「図書館の本棚だよ。図鑑とかある棚。なんだか薄い本が挟まってるな…と思って、出してみたんだ」
彼が説明する。
「でも…図書館の本には見えないね。管理シールも付いていないし…」
私は首を傾げる。
「ぼく…待ちきれずに中を見てみたんだけど…」
彼が本を開く。
「英語…」
私はつぶやく。
英語で書かれた本のようだった。
「やっぱり英語だよね? 愛ちゃん英語得意だよね? 読んで!」
彼が期待に満ちた目で私を見る。
私は別に英語得意じゃない。
「いや…あの…。わたし英語得意じゃないよ。雨宮くんよりは多少わかるって程度…」
彼がちょっとがっかりする。
「愛ちゃんなら解読出来ると思ったのに…」
解読…。
「うん…。解読…しよう!」
私は自分の手をギュッと握る。
「出来るの?」
雨宮くんが嬉しそうに私の顔を見る。
「うん…。英語得意じゃないから時間かかるかもしれないけど…。これぐらいの文章量なら…出来る…かもしれない…」
自信はないけど、私はその本を和訳してみることにした。