第1章 約束(雨宮久遠)
放課後。
「ほら、この本。魔術がたくさん載ってるよ」
「本当だ!こんな本あったんだ!すごい!」
私たちは読書席で雨宮くんが持ってきた本を一緒に眺める。
図書館だからコソコソ話すけど、テンション上がっちゃう。
「雨宮くんて本探すの上手だよね!」
私は雨宮くんの顔を見て言う。
「えへへ、照れちゃうな。本が好きだから」
雨宮くんが少し照れながら答える。
「私の好きな本もバカにしたりしないし…」
「バカになんてしないよ!『森の魔法使い』僕だって大好きだもん」
「うれしいな。小学生の時から私たち好きなものずっと一緒だね」
「えっ……。あ、うん…」
「…?」
私が雨宮くんの顔を見て笑うと、彼はなぜか頬を赤らめてうつむいた。
「あ、あのね…」
雨宮くんがさらに小さな声で話す。
「ぼく、好きなものって全然変わらないんだ…。小学生の時から…」
「うん?マシュマロとか?」
「……」
私の答えに雨宮くんがちょっとあきれた顔をする。
「愛ちゃんも…なんて言うか…変わらないよね」
「え?」
雨宮くんはちょっとふてくされた感じで黙って本に目を落とした。
機嫌が悪くなるとすぐ黙る。
雨宮くんも小学生の時から変わらないもん。