第1章 約束(雨宮久遠)
「愛ちゃん!おはよう!」
私がA組の教室に向かって階段を登っていると、雨宮くんが後ろから階段を駆け上がって来た。ちょっと息を切らして。
「おはよう、雨宮くん。大丈夫?」
私がそう言うと、雨宮くんはちょっと頬を膨らます。
「もう!大丈夫だよ。ちょっと走ってハァハァしただけ。愛ちゃんの姿が見えたから…ぼく走って来たんだ」
「そうなんだ。どうかした?」
「え?べつにどうもしないけど?」
雨宮くんは息を整えながらにこにこする。
「おっす雨宮。元気そうだな」
後ろから私たちの幼なじみの如月斗真が声をかけて追い越していく。
「もう!みんなしてぼくを病人扱いして!ぼくはいつも元気だよ」
そう言って雨宮くんは再び頬を膨らます。
「そうだな!ハハハ」
斗真は笑いながらA組の扉を開けて教室に入る。
雨宮くんがそれを見て少し寂しそうな顔をする。
「いいなぁ…斗真は愛ちゃんと一緒のクラスで。ぼく2年生になったら一緒のクラスになれるかなって楽しみにしてたのに」
「べつに一緒のクラスでもあんまり話したりすることもないけどね。斗真休み時間とかずっと寝てるし…
あ、いけない。如月くんて呼べって言われてたんだった」
「そっか如月くんかぁ」
そう言って雨宮くんはふふっと少し笑う。
「ねぇ愛ちゃん今日の放課後も図書館行ける?ぼく愛ちゃんにオススメの本またみつけたんだ」
「うん。行けるよ。じゃあ放課後、図書館ね」
「うん。後でね!」
私たちはA組の前の廊下で別れた。