第3章 僕の名前(逢坂紘夢)
幸せな一日が終わった。
帰りが遅くなったからというのを口実に、あの後僕は彼女を家まで送っていった。
帰り道を歩きながらいろんな話をした。
影から見守っているだけではわからなかった情報がいろいろ聞けた。
僕がオンラインゲームをしようかなって話したら、レベル上げを手伝ってあげるとか装備をあげるとか言ってくれた。
今日は間違いなく僕が生きてきた人生の中で一番幸せな日だ。
明日はどんな日なんだろう。
明日になったら、彼女はまた僕の名前なんて忘れているんじゃないだろうか。
今日のことは夢のように消えてしまうんじゃないだろうか。
でも、たとえ夢でも。
僕はこのことをずっと忘れないで生きていける。
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