第3章 僕の名前(逢坂紘夢)
「それで…名前を入力したら、このハートのルーレットが回るから、カップルのお客さんには一緒にクリックしてもらうの。
はい、逢坂くんもマウスに手を添えて」
彼女がマウスを持った手の上に、僕の手を添えるように促す。
「え…いいの…?」
僕はおずおずと尋ねる。
「うん。こんなふうに自然と手を握れる演出なの! なかなかだと思わない?」
素晴らしいよ!
僕は彼女の手の上にそっと手を乗せる。柔らかい…。
「一緒にクリックするよ。せーのっ!」
彼女の指ごしに僕もマウスをクリックする。
今日はすごい日だな…。
ルーレットが止まり、画面が変化する。
“逢坂 紘夢さんと神田 愛さんの相性は95%です!”
「すごいよ! 逢坂くん! 95%だって!」
彼女が感嘆の声をあげる。
「うん…すごいね…」
すごすぎて上手く言葉が出てこない。
しかも、ぼんやりしすぎて彼女の手の上に自分の手を置いたままなのに気づく。
僕はサッと手をどける。
「はは…ごめん」
僕はなんとなく笑ってごまかす。
「付き合っちゃう?」
彼女が僕の顔を見て言う。
え…何これ…。
「ほ…本気にしちゃうよ?」
僕はなんとか返事する。
彼女はニッコリと微笑んだ。
僕には冗談なのか本気なのかわからない。
僕がわかるのは彼女の笑顔がすごく可愛いってことだけだ。