第3章 僕の名前(逢坂紘夢)
「2年A組の神田愛です。趣味は読書とオンラインゲームです。パソコンが得意なのでパソコンを使う作業があれば是非やらせて下さい。よろしくお願いします」
パチパチ…
実行委員会の最初の集まりで自己紹介があった。
(そうか…彼女パソコンでよくネットしてると思ってたけどオンラインゲームをしてたのか。早速、なんのゲームをしているのか調べて僕もアバターを作らないと…)
心の中で計画を練りながら他の生徒の自己紹介を適当に聞く。
パチパチ…
僕の番。
「2年E組の逢坂紘夢です。部活は文芸部です。文章を書くのが得意なので、そういう作業があれば協力出来ると思います。よろしくお願いします」
パチパチ…
自己紹介が終わって座る時に彼女の顔をチラッと見てみた。
彼女は僕の顔を見てニッコリと微笑んだ。
うん、こういう集まりで知り合いがいると安心するもんな。
彼女の役に立てて嬉しいな…。
…
「これ、誰か図書館に返して来てー」
「はーい」
机に積まれた本を指差して先輩が指示する。
手が空いていたらしい神田さんが返事した。チャンス!
僕もすかさずそちらに駆け寄る。
「本は重いからね。僕も行くよ。部活の用事で図書館にはよく行くし」
僕がそう声をかけると、彼女は嬉しそうにニッコリ笑った。可愛い。
「ありがとう! えっと…誰だっけ?」
えっ…。
「…逢坂。2年E組の逢坂紘夢だよ…」
「ごめんごめん〜。こないだの自己紹介ちゃんと聞いてたつもりなんだけどね。人数多くて覚えきれなくて! 逢坂くんよろしくね〜」
彼女は明るくあっけらかんとした表情で僕に言った。
いやいや、以前に文芸部に誘ったことは記憶にないの?
思い切ってデートに誘ったことさえ…?