第7章 the past ③
*****
翌日。
僕は病院に行く前に花屋に寄る。
花屋にはたくさんの色とりどりの花がある。
僕は店の右側にある、ガーベラのブーケ花束を買い、病院に向かう。
*****
「いらっしゃい」
カーテンを潜り、一会の前に僕が現れるのと同時に一会が言った。
一会は僕が持っている花束を見てぱぁっと明るくなった。
「まぁ!なんて綺麗なのでしょう!よく見せてちょうだい」
手を伸ばして来たので、花束を受け渡した。
「あら、ガーベラじゃない!」
「ガーベラ、好きだろ?特にオレンジが」
「どうして私の好きな花を知っているの?」
目を花束から僕に移す。
「どうしてでしょう?」
僕は笑みの含まれている声で言った。
そしたら、少し困った顔をした一会はまた花束に目線を移す。
一会が高校3年の時。
一緒に立ち寄った花屋でオレンジのガーベラに釘付けになっている一会を見たのを思い出した。
一会はその花束をサイドテーブルに置いた。
嬉しそうに見つめるその横顔は老いていても、少女
の頃の面影がある。
「あの、さん」
「一会でいいですよ。颯斗」
鼻の奥が痛くなるのを感じた。
あの頃に戻れた気がしたから。
「一会....僕のことを思い出してくれ............」
気付けばそう口走っていた。
もう。
止められなかった。