第7章 the past ③
それから、春が6回巡ってきた年、友達と仙台に遊びに来ていた時だ。
公園に、とても見知った顔があった。
ベンチに座り、隣に座っている男性と楽しそうに話している。
一会の姿を久しぶりに見て僕は涙が出るかと思った。
僕は一会の姿より、もっと目を引くものが目に入ってきた。
一会の細く長い左の薬指。
白銀に光るそれはあった。
それは隣にいる男性も左の薬指にしていた。
一会........
君はいつの間に愛する人と結婚したの?
僕の想いはもう....届かない....
一会の姿をよく見てみたら、お腹が少しだけ膨れている。
妊娠しているのだ。
僕は目が熱くなり、鼻も痛くなった。
その場から逃げるようにして、僕は駅のホームに駆けた。
後ろから友達の声が聞こえたが、僕は振り向かない。
*****
それから僕は、なるべく一会のことを考えないようにした。
毎日学校に行き、部活をし、充実した日々を送っている。
毎日毎年同じ事の繰り返しで、自然と頭も良くなり、バレーも上手くなった。
勉強面ではいつしか学年上位に入り、部活面ではずば抜けた天才と呼ばれるようになった。
勉強もでき、運動も出来る。
誰もが羨む条件に僕は当てはまる。
それを「すごい」と褒め称えてくれる人もいる。
その反対に妬む人もいる。