第6章 遺書
吉川はノートから目を離し、月島のほうを見る。
「どうして、これを僕に?」
吉川の手は少し震えている。
それを見て月島は、
「そこに書かれているカラスが吉川さんだと思ったからです。案の定、そうみたいですけど」
吉川は黙った。
月島は立ち上がり、勉強机の引き出しから、白い、縦に長い封筒を取り出した。
それを吉川の前に置く。
その封筒には、『颯斗へ』と書かれていた。
吉川は目を見開き、月島を見る。
「曾祖母がまだ生きていた時、僕にこれを渡したんです。『颯斗に、渡して』と。僕はその人と会ったことないのに、渡せないと言ったのですが、曾祖母が『大丈夫。きっといつか出会うから。それまで持ってて』と」
吉川は封筒を手に取り、裏を見た。
のりでしっかりと封をしている。
「今日は親が帰って来ないから、安心してください。僕はリビングにいます。帰るときになったら声をかけてください」
そう言い残すと、月島は部屋を出て、1階に降りた。
降りたのを確認すると、吉川はカバンの中から筆箱を取り出しその中からハサミを取り出した。
そのハサミで丁寧に封を切っていく。
封筒の中には何枚かの便箋が折り畳まれていた。
広げてみると、懐かしい一会の字が表れた。
その便箋を読んでいく。