第5章 the past ②
どうせあと3日の命だ
今更見付かろうが関係ない
僕は最期に一会に会うんだ
*****
大きな病院の低い位置にある屋上。
そこに入院患者のためのちょっとした広場がある。
その広場の上空を通りかかった時。
入院着を着た見知った女の子がベンチに座っている。
一会っ!!
僕は急降下し、一会の目の前に来た。
僕が現れると一会は目を大きく見開く。
「颯斗....?」
僕はカーと鳴き、一会の隣に止まる。
すると、一会は僕を持ち上げる。
目の前が一会いっぱいになる。
「よかった。もう会えないと思った。あの日。ひとりにしちゃってごめんね
一会の声は震えていた。
一会は僕を包んだまま、膝の上に置いた。
「私ね。小さい頃から心臓が弱くてね。20歳まで生きられるか分からないって言われてたんだ。でもね、そろそろ限界みたいなの。心臓発作が前より頻繁に起こるの。だから、こうして入院して少しでも長生きできるように頑張ってる」
一会は哀しい顔をする。
今にも泣きそうだ。
「ずっと前から覚悟はしてた。だけど、やっぱり........」
一会は僕を抱き寄せ、震える声で
「死にたくないよ....」
僕の羽根の一部が濡れる。
一会は声を殺して静かに泣いた。
この時の一会を見て僕は助けたいと思った。
一会が僕を助けてくれたように、次は僕が一会を助ける。
*****
夕方になり、僕は一会と別れ、空高く飛ぶ。
あの時....
一会と出会った場所に行く。
あるかどうかもわからない僕の羽根を探す。
しばらく探し、ここにはないと思い、次の場所に行こうとした時。