第5章 the past ②
空に戻った僕は直ぐに長の前に突き出された。
「何故地上に降りた」
ドスの利いた声が響く。
「あのことを忘れたわけではなかろう」
僕は直ぐに答えなかった。
「…………」
「…………」
長も黙る。
「ただの........好奇心です」
「好奇心、だと?」
「はい」
「貴様はただの好奇心で我らを危険に晒したというのか!!」
「はい」
「ふっ........」
馬鹿げていると、呟く長。
「覚悟は出来ているのだろうな」
「はい」
「ならばその足。わしに捧げよ」
「っな!」
「覚悟は出来ているのだろう?」
長は僕の3本目の足を見て笑う。
ヤタガラスは3本目の足がなくなると死んでしまう。
つまり、死刑ということだ。
僕は固唾を呑んだ。
「........わかりました」
長はふんっと鼻で笑った。
「決行は3日後の夜明けだ」
*****
僕は自分の巣に戻った。
僕には親兄弟がいない。
哀しむものなどいない。
でも僕はやり残したことがある。
もう一度一会に会うために。
僕はこっそりと地上へ降りる。