第1章 82回目の高校2年生
なんで僕だけ置いていかれる?
みんなは成長するのに
僕だけしない
りゅうだってそう
去年までは後輩だったのに........
「ーーー……おい!」
その声で我に返った吉川はその人を見た。
同じクラスの松本だった。
吉川の肩を掴んでゆらゆらと揺らした。
「吉川!整列!」
「あ....わりぃ....」
吉川と松本は走って列に並んだ。
準備が出来たようだった。
馬鹿だな
今更考えても意味ないよ
これは僕が望んだことなんだから....
*****
体育館から教室に戻っている時。
体育館と2年の教室がある第3教棟を繋ぐ外廊下でのこと。
吉川は田中と話しながら歩いていた。
「颯斗、今日何日だっけ?」
吉川の右隣にいる田中が聞いてきた。
「今日は6日だ」
そう言うと吉川は立ち止まった。
立ち止まった吉川に気付いていない田中は1人でごちゃごちゃ言いながら歩いていた。
「……ってことになるよな!え、は?……颯斗?」
隣にいたはずの吉川がいないのに気付いて大きな声を出してしまった。
周りの人たちはそんな田中を見てクスクス笑っている。
「お前、なに1人でしゃべってんだよ!」
前にいる男子3人のうち、田中から見て左にいる男子が笑いながら言った。
田中は急に恥ずかしく、「うっせー!」と言うと、後ろを振り向き、吉川の姿を見つけた。
吉川はグランドを見ていた。
グランドのどこを見るわけでもなく、ただグランドを眺めていた。
吉川の視界に1羽の真っ黒な鳥が入ってきた。
「カラス……」