第4章 血縁関係
僕はそれを一会にあげた
僕の羽根に触れることができるのは一会と近いものだけ
つまり、一会の血が流れている人間だけだ
僕も触れることができない
もし触れれば、今のように体が拒絶する
一会と月島はどういう関係だ?
「吉川」
澤村の声で我に返った。
「どうした?早くしないと置いていくぞ」
澤村が鍵を弄ぶ。
「す、すみません。すぐ出ます」
吉川はジャージをぐしゃっと丸めてバッグに詰め込み、そそくさと部室を出る。
*****
帰り道。
吉川は月島の後ろを歩く。
そして、月島の隣を歩く山口がいなくなったところで隣に行って話しかける。
「なぁ、月島。ちょっといいか」
「はい?」
「ここじゃダメだ。こっち」
「は!?」
吉川は月島の細い手首を掴んで引っ張る。
明らかに帰り道ではない道に逸れる。
その道の少し奥に小さな公園がある。
そこに入ると吉川はぱっと手を離す。
少し痛かったのか、月島は掴まれた右手首を左手で摩(さす)る。
吉川と月島は近くにあるベンチに座る。
公園の街灯がほんのりと吉川と月島の顔を照らす。
吉川は膝の上に肘を置き、両手の指を絡める。
自然と腰が折れる姿勢になる。
月島は背凭れに背を預け、空を仰いでいる。
「なぁ、月島」
吉川は自分の絡めている指を見たまま話しかける。
月島は吉川の声に答えない。
4月の東北はまだ寒い。
日が暮れ、星が夜空を覆い尽す。