第2章 出会い
吉川は軽くサーブをし、反対コートにいる田中に返す。
田中はそのサーブを綺麗に返す。
自主練は21時頃まで続いた。
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翌日の昼休み。
吉川は田中と昼食の弁当を買いに売店に来ている。
売店にはたくさんの人がいる。
「おっちゃん、のり弁」
吉川はそう言い、360円を手渡す。
おっちゃんは無言でのり弁を吉川に渡し、お金を受け取った。
田中はから揚げ弁当を買っていた。
自動販売機でお茶を買う。
その時、
「え....?」
吉川はお茶を取り出すと、弁当とお茶と財布を田中に押し付ける。
「は....?」
「ごめん、りゅう。ちょっと持ってて」
強引に田中に持たせると、吉川は走り出す。
徐々に速くなっていく。
その顔には焦りの色が浮かんでいる。
なんで....
なんで一会(いちえ)が....?
*****
吉川は第2体育館の側に来ている。
息を荒くし、辺りをキョロキョロと見回している。
だが、そこには吉川しかいない。
あれ?
いない....
って、当たり前か....
こんな所に一会がいるはずない
一会はもう........いないんだ
吉川が教室に戻ろうとした時。
視界の端に見覚えのある、懐かしい色が見えた。
それは薄い金色。
一会........?