第2章 出会い
ぞろぞろと教室を出る人達に混ざって吉川も教室を出た。
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部室でジャージに着替えた吉川はシューズを履き、体育館に入った。
吉川はまず、弛(たる)んでいるネットをしっかりと張り、壁の下にある窓を開ける。
2階の窓も開けるため、階段を使って2階に行く。
2階のすべての窓を開け、下に戻ろうとした時、誰かが体育館に入ってきた。
誰だろう、と思い下を見た。
扉の前に見知った顔が左右に動いている。
へー
烏野に来たんだ
天才セッター 影山飛雄
黒髪で吊り目ーーー影山飛雄はどこで着替えたのか、学校のジャージを着ている。
辺りを見回しても人がいないと知ると、端にボールがあるのを見つける。
それを拾うと、2階のある方のコートのエンドラインより後ろに立つ。
サーブでもするのかな
2階で黙ってみている吉川は少し口元を緩める。
そんな吉川が2階にいるとも知らない影山は1つ息を吐く。
そして、高くボールを投げ、それに合わせてジャンプする。
影山の手の最高打点にちょうどボールが来る。
勢いよく振り降ろされた手によってボールは向こう側のコートに吸い込まれていく。
ちょうど、真ん中あたりにボールが落ちた。
すっげー威力だな
だけど、コントロールはしきれてないって感じだな
吉川は影山から目を離し、階段を降りて行く。
その足音に影山の肩がビクッと動き、後ろを振り向いた。
「ちわっす!」
影山は勢いよく腰から折り曲げ、頭を下げた。
そして、そのままの状態で、
「コート勝手に使ってすみません!」
吉川は少し驚いた顔をする。
王様でも礼儀ってもんは知っているんだな
吉川はにっこりと笑うと、
「別にいいよ。まだ誰も使ってないし」
吉川はそう言うと、体育倉庫に入って行く。
ボールがいくつも入った籠を出す。
コートの隅まで運ぶと、ボールを1つ影山に向けて放った。
影山はそれをキャッチする。
首を傾げて吉川を見る。