第2章 出会い
4月8日。入学式。
吉川はいつもより遅い時間帯に家を出た。
8階建てマンションの7階。
7階から1階に降りるため、エレベーターの下ボタンを押す。
やがて、チーンとエレベーターが鳴り、口を開けた。
吉川はエレベーターに乗り込むと1階ボタンを押した。
1階に着く間に3人の住人が乗り込んで来た。
1人は5階に住む女子高生。
2人は3階に住む会社員らしい男。
4人とも1階で降りた。
吉川は腕時計で時間を確認する。
8時5分。
吉川はスポーツバッグの他にもいつもは黒い皮のカバンを持っているけれど、今日はそれがない。
今日は入学式で、授業がないからだ。
吉川はいつもと同じ道で学校に行く。
*****
入学式の間、2年生と3年生は自教室で待機している。
しかし、一部の人は体育館で待機している。
その一部の人は入学式後の部活動紹介に出る人達。
吉川は自分の席でボーっとしていた。
席が窓際のため、窓の外を眺めている。
「颯斗」
不意に名前を呼ばれてそちらを向く。
そちらには縁下が立っており、手には数十枚もの紙を持っている。
「なに?」
「大地さんがこの紙配って勧誘しといてくれって」
手に持っていた紙を吉川に見せた。
それはバレーボール部のびらだ。
それから、と縁下は続ける。
「それから、俺たちが勧誘している間に誰か来るかもしれないから、誰か第2体育館にいてくれって」
吉川は少し考えてから、
「僕が体育館に行くよ」
「そうか。分かった。じゃ、また後でね」
縁下はそう言い、教室を出て自分の教室に戻って行った。
それから、程なくしてチャイムが鳴った。