
第3章 家族写真 ハリー誕生日夢/捏造/3年生前の夏休み

キングスクロス駅に向かうホグワーツ特急は大勢の生徒を乗せて緑豊かな景色の中をぐんぐんと進んでいく。
1年が終わり夏休みとなる明日から始業式兼入学式となる9月1日までの長い休みだ。
生徒達は皆、遊ぶ日やお泊り計画など…和気藹々と話していた。
スリザリン生なんかは名家や貴族などの家系も多い為にダンスパーティーなどという洒落た話も出ている程だ。
そんなコンパートメントの外から聞こえる楽しげな声に背を向ける様にして、窓の外へと視線をやったハリーは大きく溜息をついた。
「僕、出来る事なら帰りたくないよ…」
「元気だしてハリー!私、貴方にどうにかしてプレゼントを送れないか探してみるわ!」
はぁ…と、一際大きなため息をつくハリーに向かいに座っていたハーマイオニーは慌てて声をかける。
そんな彼女にお礼を言うとあきらめ顔で「無駄だと思うけど…」と付け足すハリーにハーマイオニーは顔を歪めた。
「ほんと、ハリーは可哀想だよ。だって、年齢=お祝い無しの誕生日だろ?」
ハリーの手を握り元気付けるハーマイオニーを横目に、ロンは肘掛けに肘をつきながら言った。
ロンの憐みの声にハリーは顔を上げると首を横に振る。
ハリーの首振りが何を意味するのか解らなかった2人は顔を見合わせた後にもう一度ハリーを見るが、ハリーが何かを語る様子ではなかった為、焦れたハーマイオニーが「何?」と詰め寄った。
「えっと…あるよ、何回かは」
「「なにが?」」
「誕生日プレゼントを貰った事」
「「…………はぁ?!」」
暫しの沈黙を破ったのはロンとハーマイオニーのばっちりと揃った驚きの声だった。
ここ数年でハリーがマグルの叔父さん宅でどんな扱いを受けているかは知っていたし、万が一にでも彼があの一家から誕生日プレゼントなどというのを貰う事は無いと断言できる2人にとってハリーの発言は予想外過ぎた。
「でも、いつ会えるか解らないんだ。忙しい人だし…もう僕の事なんて忘れてるか、もォおおぉお!?!?」
弁解をする様なハリーの言葉も聞こえていない。
そう、今2人が聞きたいことは唯1つーーそれは『誰か』という事だけ。
俯くハリーの肩をがっしりと掴んだ2人はガクガクとハリーを揺さぶりながら超至近距離で言った。
「「誰なの?!」」
2人の剣幕に恐縮しずれた眼鏡を直しつつハリーは答えた。
「そ、れはーー」
