第1章 本編
跡部はかなり呆れていた。そう、私はすっかり目的を忘れていたのだ。
「あ、ジローの夢っ!」
「そうだ。お前、忘れてただろι」
「え?あはは…」
私は笑って誤魔化してみた。しかし、跡部には全て見切られていた。
「ι…で、どうやって見るの?」
「これだ」
跡部は壁を指差した。しかし絵画とテレビ以外は変わったものはない。
「何にもないけど…」
「ちゃんと見てんのか?」
私は再び目を凝らしてみる。すると、なにやらテレビに何かついている。
「テレビ?」
「あぁ。ちょっと待ってろ」
跡部はそういうと、内線でどこかに連絡を取り、戻ってきた。
「画面を見ろ」
私は画面に目を向ける。
「何これ…」
私は、目を見開いたまま固まっていた。
「おい、大丈夫か?」
「え?う、うん…」
「これが、今ジローの見てる夢だ」
「・・・・・・」
私は画面をじっとみつめた。画面には白いモコモコがいっぱいある。
「ねぇ跡部…」
「アーン?」
「これ…なんだと思う?」
「ヒツジじゃねぇか?」
モコモコの正体は、ヒツジ。ということは、ジローに間違いない。
「夢でも、ヒツジなのね…ι」
私は画面にかじりつくように見た。
「…どんな夢みてんの…ι」
ジローの夢は、全くもって意味が分からない。黄緑色のヒツジが出て来たり、空から飴が降ってきたり、43歳の愛車が出て来たり…
「なんかよく分かんない夢見てるなぁ…あ、ジローがいっぱい♪」
今度は、小さいジローがたくさん出てきた。
「かわいい♪」
『え~ん…』
『どうしたの?』
『不二子とはぐれたの…』
『それは大変だぁ!』
「え!?私?」
思わず私は画面に向かって言った。
『不二子を探さなきゃ、ジロたん帰れない…』
『みんなで探そう!』
「たくさんの小さいジローに、私探されてる…何かいいかも♪」
私はウキウキしながら想像をした。
『見て見て!誰かが倒れてるよ?』
『本当だぁ!助けなきゃっ』
「何か黒髪のちびが出てきた」
私は画面に独り言をもらした。
『うんしょ…うんしょ…』
『大丈夫ぅ?』
『あぁ…大丈夫や』
『あぁ~忍足だぁ☆忍足も手伝ってよ?』
『何を?』
『不二子探しぃ♪』