第5章 《ダイヤのA》好きになってはいけない
「そっか…」
一通り、話を聞き終えた千夏はフゥと息をついて言った。
「外面も好きだけど本当の御幸くんの方がもっと好きかなー」
「…?」
「私も好きだよ、御幸くん」
優しい笑顔だった。思わずギュッと抱きしめた。華奢で柔らかくていい匂いがして…。
「み、御幸くん…?///」
「なあ…」
「?」
「俺のどこが好きなんだ?」
顔を上げて、間近で千夏の顔を覗き込む。真っ赤になった千夏の顔を優しく撫でる。
「えーっと…か、顔?かな…」
「ぶっ…アハハハっ」
何故か吹いてしまった。何が面白かったのか分からないが笑いが出てしまった。
「な、なんで笑うのー答えたのに」
「いや、顔って…普通だなって」
「だって…それしか出なくて」
まあ、悪くなかった。
次の日ー
朝練を終え、教室に向かう。
「それにしてもまさか、お前が付き合うことになるとはなー」
隣を歩く倉持が笑いながら言ってくる。元々、彼氏がいなかったと言うのは伏せて理解してくれるであろう範囲で説明した。
「別にいいだろ」
「なんかしたのか?」
「まだ、何もしてねーよ」
「ヒャハハ」
教室に入ると一人だけ先客がいた。それは机にうつ伏せになり、寝ていた。紛れもなく千夏だった。
「あー俺、寮に忘れ物したわー」
「…嘘付け」
倉持はそう言うと来た道を戻っていった。気を使ったつもりなんだろう。寝ている千夏にソッと近づく。疲れているのか自分に気がつかない。
「無防備だな」
気持ちよさそうに寝息を立てる千夏の頬を撫でる。くすぐったそうに少し身じろぎをする。…可愛い。
「…襲われたいのかよ」
自分の右手がウズッと震える。しゃがみ、頬にキスをする。
「起きろ、バーカ」
「ん…?んー」
耳元で声を掛けるとやっとの思いで起きた。目をこすってから俺を見た。
「御幸くん…?」
「おう」
「ん?あれっええ!?////」
「なんで驚くんだよ」
「いや、だって…まさか御幸くんに起こされるなんて」
顔を真っ赤にして慌てる千夏をとりあえず、落ち着かせる。
「なんでこんなとこで寝てたんだ?」
「昨日、夜中まで勉強してて…」
「…勉強くらい俺が教えるっつーの」
「でも、御幸くん疲れてるし…」
「千夏の為なら勉強くらい教える」