第5章 《ダイヤのA》好きになってはいけない
両手で千夏の両頬を包む。柔らかく気持ちよい。
「じゃ、じゃあ今度教えてくれる?」
「あぁ」
はにかみながら笑顔を見せる千夏にそのままキスをする。
「んっ」
頬から手を離し、千夏の腰に手を回す。グッと引き寄せ、密着する。キスをするのは初めてなのかまだ、緊張してなかなか口を開いてくれない。一旦、唇を離す。
「御幸くん…///」
「緊張すんな…力抜け」
「うん…///」
再び、唇を近づけ、触れる。今度はすんなりと舌が入る。
「んっ…///」
舌を絡ませる。短い甘い時間だった。唇を離し、しばらく見つめ合う。反応の示したのは千夏だった。
「…/////」
「照れすぎ」
「だ、だって///」
ギューッと抱きしめる。暖かくて柔らかい。今までこんなに女子に興味を持ったのは初めてだった。実際、キスなんて見よう見まねだ。女子の気持ちなんて分からない…それでも好きになった女子。こんなにも心惹かれるのは千夏だけだ。
「御幸くん…」
「ん?」
「人来ちゃうんじゃ…」
「まだ来てねーから、後少しだけ」
「う、うん」
そのまましばらく千夏を抱き締めた。落ち着く。小さい時から一人だった俺はこんな幸せを感じたことはなかった。
「俺、今すげー幸せだわ」
「どうしたの、御幸くん」
いきなりのことにクスクスと笑う千夏。この一部始終を寮に忘れ物を取りに行ったであろう倉持が見ていたことに後から気が付く。
まあ、別にいいだろう。
完ー