第1章 《ダイヤのA》バカでも風邪は引く
「ご馳走さまでした」
「はや!?」
ご飯も食べ、春っちが持ってきてくれた薬を飲む。寝たからなのか少し体が楽になり、いつも通りの元気で会話が出来るようになった。
「お前ら、風邪移るからさっさと部屋出てけー試合もあるんだ」
「えー!?それならお前はどうなんだよ!御幸一也!」
「俺は風邪引かねーから」
「それなら俺もだ!!」
「栄純くん、病人の前で騒いじゃダメだよ」
今にも御幸くんに食って掛かりそうな沢村くんを春っちは宥める。
「…錦城先輩は熱大丈夫?…なんですか」
「降谷くんもありがとう、大丈夫だよ」
「他の先輩達も心配してましたよ」
「そっか、明日お詫びしなきゃね」
春っちの報告に他の皆にも心配をかけてしまったのを知った。
「三人もそろそろ、戻った方がいいんじゃない?風邪が移って試合に出れなくなっちゃうよ?」
「うっ…」
三人して口ごもる。試合には出たいらしい。
「それに三人が出ないと私も寂しいからね、元気に試合出てよ」
「錦城先輩…」
笑顔でそう言うと名残惜しそうに御幸くんの部屋を出て行った。こんなにも後輩に思われるのはとても嬉しい。
「お前な…」
「ん?」
今まで黙って事の顛末を見ていた御幸くんが声を掛けてきた。なんだか呆れるようにため息をついた。
「あいつらだってお前に気があるんだからそんな愛想振り撒くな」
「…付き合ってるの言ってないんだ」
「言ったら面倒になるからな」
余計に拗れる気がするのは気のせいか。
「そろそろ、寝ろ、まだ万全じゃないんだし」
「はーい」
制服がシワになるのは仕方ない。着替えは持ってきてなかったのだから。
「電気消すぞー?」
「えっあ、ちょっと待って!!」