第1章 《ダイヤのA》バカでも風邪は引く
「お前、朝から無理してたみたいじゃねーか」
「気のせいにしてましたーアハハ…」
「笑ってる場合か」
「すいません」
御幸くんに心配を掛けたようでなんだか申し訳なくなる。いつまでもここで寝る訳にもいかない。
「ごめんね、御幸くん、ベット借りちゃって…帰らなきゃね」
「はあ?何言ってんだ、病人は寝てなきゃだろ」
「いや、いくらなんでも御幸くんの寝る場所を奪う訳には…」
「大丈夫、俺は別の所で寝るし」
「…同室って誰なの?」
「倉持」
「帰らせていただきます」
倉持に見つかれば、たちまち笑い者にされ、沢村くんみたくいじりがいのあるおもちゃになりかねない。
「そう言うと思って倉持には別の部屋で寝るように言った」
「な、なんだ…良かった…」
「俺で安心した?」
「まあね…」
…と言うことは一晩、御幸くんと一つ屋根の下となる。私は学校から家までさほど遠くないので家から通っている。こういう事はめったに起きない。いきなりのイベント開始だ。
コンコン
すると部屋のドアがノックされた。御幸くんが合図をすると入ってきたのはペットボトルを持った降谷くん、袋を持った春っち、そして…。
「沢村、なんだその量の料理…」
「え?元気が出るように沢山積んできたんだよ、悪いか!」
「そんなもん、病人に食わすな!しかもよりによって揚げ物ばっかってどうゆう事だよ!」
「だから言ったじゃん、栄純くん」
「うっ…」
沢村くんも自覚はあったらしいが…。でも、沢村くんは私が元気になるようにと思ってしてくれたことだ。
「ありがとう、沢村くん」
「え?」
沢村くんの手からお盆を受け取り、自分の膝の上に置く。
「全部食えるのか?お前」
「大丈夫、行ける!行ける!」