第4章 《Free!》惚れたあの子
「よっ!三谷!」
「…」
ポカーンとしたまま、しばらく御子柴を見てから監視台から降りて駆け寄る。
「御子柴!」
「今日は泳ぎにきた」
「あー今日は水泳教室ないからな!50mプールが空いてるよ」
告白してまだ、答えも伝えていないのに御子柴はよく私に話し掛けられるものだ。
「久々に勝負しないか?三谷」
「え?まあ、もうすぐあがりの時間だから…ちょっと聞いてくる!」
《御子柴清十郎side》
三谷はそう言って受付に行った。
「なんか明らか態度が違うような…」
まあ、無理もないか。告白しておきながら普通に接してるんだから。別に諦めた訳ではない。
「いいってよ」
「よし!じゃあ、勝負だな!」
50mプールで準備体操を済ませてキャップとゴーグルを付ける。チラリと三谷を見る。着ている上着を脱いでキャップを被っていた。ついつい胸に目がいく。
「久々だし、御子柴には敵わないよ」
「やってみなきゃ分からんだろ!」
笑みを見せる。飛び込み台に立ち、構える。
「種目はフリー、合図は三谷に任せる」
「分かった…じゃあ、行くぞ…レディ…」
一呼吸おき…
「ゴー!」
勢いよく蹴り、飛び込む。先手を取り、三谷よりリードを取りながらスタート。距離は100mで行って帰ってくるだけの単純勝負。リードを取ったものの三谷の気配を振り切れない。
流石に振り切れないか…。
ターンをし、ラスト30m。そこからの三谷にの追い上げに背筋が凍る思いがした。プールの壁面にバンッと手をつく。
「ハア…ハア…」
「同着か…」
肩で息をする三谷を見ながら大したものだと思う。女子ながら男子並の力を持つ三谷は男子の中でも注目されていた。
「ど、同着?」
「あぁ…全く衰えてないじゃねーか!三谷」
水から上がり、三谷に手を差し出す。しばらく自分の手を見てからそれに捕まる三谷。
「伊達にプールでバイトしてないよ」
グイッと引っ張り上げる。
「わっ」
三谷が水で滑り、倒れそうになるのをすかさず支える。密着したこのしばしの時間。自分で支えたくせにドギマギする。
「ご、ごめん!御子柴!ありがとうっ//」
「お、おう//」
あれ?
三谷の反応に違和感を覚える。頬を赤くして俯いていた。
…これは脈ありか。