第3章 《Free!》サプライズバースディ
「ふふんっ」
得意気に笑う。するとまたノックの音がした。
「あ!来た来た!」
漆は急いで玄関に向かい、ドアを開ける。誰からか四角い箱を受け取り、戻ってきた。
「ふふふっーじゃーん!」
箱の蓋を開けるとそこには小さいながらもショートケーキがそこにあった。プレートには「Happybirthday 凛ちゃん」と文字が書かれていた。
「お兄ちゃんに頼んで作ってもらったんだっやっぱり、誕生日にはケーキだよね!」
「…」
「凛ちゃん?」
思わず下を向く。感極まって泣く姿を見られたくなかった。だが、漆はそれもお見通しとばかりに隣に腰を落とし、笑った。
「凛ちゃん、泣いてるーそんなに嬉しかった?」
「な、泣いてねーし!…嬉しいけど」
「ケーキ、机の上に置いとくねー」
ケーキの入った箱を机の上に置き、漆は言った。
「ここに来るまでずっと凛ちゃんのこと考えてたんだよ、沢山話して最高の誕生日にするんだって!」
笑いながら言っているものの少しの寂しさが混じっていた。
「漆…」
漆を抱き寄せ、頬に軽くキスをする。
「…凛ちゃん、私…帰りたくない…」
「…俺だって漆を帰したくない…」
だが、そうも行かない。漆には向こうでの生活がある。帰したくないなんて我が儘のなにものでもない。
「でも、帰りたくないなんて言ってられないよね…」
ギュッと抱き締め返してくる漆の手は若干震えていた。今度は頬ではなく唇にキスを落とす。深く、深く…。何度も何度も。
「り、凛ちゃんっ…息がっ」
「わ、悪い…」
一息入れて一旦離れる。頬が紅潮し、息が少し乱れている姿も可愛いと思ったりしてしまう。