第3章 《Free!》サプライズバースディ
「凛ちゃん、誕生日おめでとうー!!!」
「うわっ!!?」
腹に衝撃を加えられ、何も出来ないまま倒れこむ。視線を少し下に向ける…そこには満面の笑みで俺を見る漆がそこにいた。
「な、漆!!?」
「そうだよっ漆だよー!」
信じられなかった。活発そうな笑みに尻尾のように一部だけ長く伸びた髪、変わらない身長。会いたいと思っていた漆がいた。
「ちょっ!今すぐ俺の頬、つねってくれ!」
「え?なんで」
「夢だったらヤダからだよ」
「夢じゃないのにー」
仕方なさそうに俺の頬をつねる漆。
「痛い…てかつねりすぎだって!いたいっいたいっ」
「夢じゃないでしょ?凛ちゃん!」
「…あぁ、夢じゃない…」
上半身だけ体を起こし、ギュッと漆を抱き締める。華奢な体は今も変わらない。安心する体温。
「会いたかった…漆」
「私もだよ、凛ちゃん」
ひとしきり、抱き締めた後、漆を離し、ここに訪れたい理由を聞いた。
「勿論、誕生日だからに決まってるでしょープレゼントだって用意したんだから!」
自信満々に言いながら鞄を漁る漆。だが、横顔からは笑顔が消え、悲しそうな顔になった。
「う、嘘…どうしよう…」
「どうしたんだ?」
「折角、プレゼントあげようと思ったのに…」
取り出したのは崩れたガラスだった。元々何かの形になっていたらしいが何かの拍子に割れてしまったらしい。