第2章 《ハイキュー!!》埋まらない距離
「ねえ、ノヤさん」
「んー?」
私がスパイクを打ち、ノヤさんがそれを拾う。ただ、それの繰り返しだがノヤさんは一つも気を抜くことなく全て拾った。
「自宅謹慎が解けたら…毎日こうして練習出来なくなるね」
「…」
ノヤさんはボールを拾うのを止め、私を見上げた。台に乗っているからか余計に見上げるノヤさん。
「俺は謹慎が解けても毎日、薫さんと練習するけど?」
「え?!」
「流石に帰りが遅くなるかもしれねーけどさ、薫さんと練習すんの楽しいし!」
「そ、そっか…」
その言葉を聞けて嬉しかった。
「今度の練習試合、見に行くよ」
「アハハッありがとう」
立場が逆な気もするがまあ、この際いいだろう。
「試合、頑張るから」
「おう!」
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練習試合当日ー
「練習試合だからっていつもみたいにやっちゃダメだからね!」
「はい!」
主将の言葉に皆、いい顔で返事する。練習試合が今から始まる。ネットを挟んで並び、礼をする。ポジションに付き、ホイッスルが鳴るのを待つ。
ピーッ
「ナイッサー!!」
ボールは相手から。打たれたボールは味方が受け、セッターがボールを上げてスパイカーが打つ。ただ、それだけのことなのに…
「こんなに強いなんて…!」
試合が始まって15分。15対7でかなりの点差がついている。
「くっ…」
また、スパイクを取れなかった。
「ドンマイ!薫!次、次!」
「うん!」
《西ノ谷夕side》
薫さんが頑張ってボールを拾っている。いつも頑張っている薫さんを見るのが好きだった。小さい時から俺の面倒を見てくれたお姉さん的な存在だ。
「上がった!!」
「薫、ナイス!!」
また、薫さんがボールを拾った。
薫さんは気づいているだろうか。昔からずっと好きだったと言うことを…。でも、薫さんには好きな人がいる。誰だか知らないが…。
ピピーッ
第1セット終了。取ったのは相手だった。ベンチに戻って休憩をとっている最中、薫さんと目があった。薫さんは笑顔で手を振ってきた。
「薫さん…」
2セット目
23対24。こちらがマッチポイントを迎えた。そこでも薫さんは活躍した。同点にされると思われた時だった。ボールと床との間、約3cmのところに薫さんの手が滑り込んできた。