第63章 最終章 『夢の続き』
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葵
「けほっ……」
最初はこちらが優勢だったけど、じわりじわりと追い詰められていく
ちらりと点数を見る
25ー24
5セット目、どちらも2セットを取っていて残るはこの試合
どちらが先に勝ち抜くか、だった
汗が額から滴り落ちる
おもむろに、私はサポーターに触れた
小さく白で刺繍したカラスの絵
これに触れるたび、冷静になれる
ダンッ
葵
「!」
向こうのブロックアウトでついに追いつかれる
激しい攻防が続く
葵
「朱鳥!!!」
何度叫んだか
何本打ったか
朱鳥
「葵!!」
トスが上がる
私にボールが上がる
けれど––––
ガクン。
葵
「!!」
積み重ねた疲労により、最高打点が低くなっていた
咄嗟に過ぎていきそうになるボールをカバーした
よろめくボールは偶然に地面に触れた
こちらに入る得点
ホッとしたのも束の間
また並ぶ点数
それを追い越し、並ばれ………
いよいよ点数は27-26となった
あと1点
あと1点取れば、こちらの勝ち
なのに……!
向こうから、強烈なサーブがくる
1点の失点も許されない局面
それなのに強打で打ってくるところが、なんだか及川さんと重なって見えた
仲間のレシーブ
朱鳥のトス
先輩達のアタック
拾われる、ボール。
そして、やって来るのは向こうの強攻撃
会場全体に響く手にボールが当たる鋭い音
ブロックを押しのけ、やってきたボールをレシーブしてもらう
が––––
ブロックで軌道が大きくぶれたボールは、レシーバーの腕に当たり、果たして大きな弧を描きながら後方へ飛んでいってしまった
葵
「––––!!!」
足がすくんでしまう
取りに行かなくては、いけないのに!
でも、まだ1点あると思ってしまう自分
その時だった–––
「津田ーーーーッ!!!まだボール!
落ちてないッッッ!!!!」