第60章 二者択一
『やぁ。』
白んだ世界にたった1人立つ少女
もう何度目だろうか
随分見慣れた光景
そう、彼女は"私"
自称、"私"
彼女は喪服にも似た黒いワンピースを身に纏い、長い髪をたなびかせる
そう、あの姿は幼い頃の私なのだ
いや、喪服なんて着た覚えないけども。
葵
「………、ねぇ教えて欲しいことがあるんだけど」
『なぁに?』
葵
「あなたや、夢に出てきたみんなが"早く"って急かすんだけど……
私は何を急かされているの?」
"私"はキョトンとした顔になる
そしてにっこり微笑んで、『それは自分で考えること』と言った
誰だよこんな年齢に合ってないキャラ設定してるの
って、自分なんだろうけど……
葵
「あなたは、本当に何者なの?」
『それは言えないな〜』
少女は黒のワンピースをヒラヒラさせながらクルクル回っていた
楽しそうに
愉快そうに
『そんなに知りたいの?』
私の顔を見てか、上目遣いに尋ねてきた少女
『知って君はどうするっていうのさ』
確かに知ったところで何もできない
ただ、妙に胸がざわめく朝を迎えるのだ
この夢を見た次の朝は。
下唇を噛み締める
痛みも何もない
ここは夢の中なのだから–––
『その時がくれば、教えてあげる』
少し儚い顔をして彼女は私に背を向けた
呆然と立ち尽くす私の意識は、どんどん深くなり果たして真っ暗になった