第60章 二者択一
水落
「どうしたんだい?やけに目元が赤いけど」
バックミラー越しに私の顔を窺い見る水落
おい、この人にはデリカシーっていうものがないのか
葵
「もしこれが"失恋"とかが原因ならどうします?
可憐なる乙女のココロに傷つけちゃいますが」
水落
「バレーボールは喋らないだろう?」
人懐こい顔した笑顔で飛んだ失礼なこと言ってくれるね!?
葵
「あなたよく天然ボケとか言われません?」
水落
「ん?あぁ〜、……ないですね」
今間があったよね!
なにその"間"
言われてないの嘘だろ!
葵
「……やるからには、やり遂げます」
水落
「それがいい」
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もう何度目の景色だろうか
沢山のビルの峰々に、毎回懐かしさがこみ上げる
私も去年まではこの街に住んでいたのだ
見えてきた体育館の正門前には水落監督がいた
もちろん、この天然ボケ製造機の父親である
これから数日間、ここで私は汗水垂らすのだ
仲間は一次予選で励む中、私はここで––––