第59章 菅原さんの想い
菅原side
車体が揺れる音、エンジンの静かな唸り
響くのは静かな寝息と大きなイビキ
聞こえてくるのは、大地と葵の声–––
寝付けずにいた俺は、うっかり話に入るタイミングを失い、失礼ながらも盗み聞きをするかたちになってしまった
軽く目を閉じて、聞き耳をたてる
内容は意外にも恋愛話だった
彼女はそういう関係をもったことがない
ということに、少なからず喜んだ
俺は何を喜んでいるのか………
でもどうして大地がそんな話を持ちかけるのだろうか
大地もまた、葵に気があるのか?
………………むむむむむ。
わ、わかんねぇ………
恋ってこんなに難しいものだったかな?
意識すればするほど、どう接すればいいかわからなくなる
考えれば考えるほど、心が苦しくて、痛くて
今のままの方がいいのだろうか?
気持ちを伝えて、もしこの関係が壊れでもしたら……?
俺は多分、後悔するんじゃないだろうか
『ああ、あの時言わなきゃよかったな』
とか。
でも俺は3年
来年には、この部から、この学校から、いなくなる
葵とは、もしかしたら会えなくなるかもしれない
言わなかったら言わなかったで
『玉砕覚悟で言えばよかった』
とか、思うんだろうな
結局、ないものねだりなんだ
恋愛なんて
でも、あいつが好きだから
どうしても欲しくなるんだ–––––