第59章 菅原さんの想い
菅原side
「野菜、おいしい?」
声をかけると、葵はこちらを見てから視線を紙皿の上の野菜に戻し「おいしくないです」と不機嫌に言った
「特に、ピーマン」と付け足して
「でも食べられてるじゃん、えらいえらい」
葵
「これは、その……
せっかく菅原さんによそってもらったものだから……
食べなきゃ失礼でしょうし」
oh……
なんだか撫で回したくなった。
葵
「それに、私野菜食べなきゃいけないんです」
「大きくなれないから?」と聞き返す
葵
「む。……健康的に」
「あ……。」
そうだった
彼女は、心臓が悪いんだった
〈心臓病〉
それが、彼女を苦しめている
ストレスや過度の運動をしてはいけないらしい
血流を良くしておかないといけないから食事もある程度制限しているという
「ねぇ、葵。本当に大丈夫なの?
部活と、日本代表を両立しても」
彼女の喉元がコクリと動く
最後のピーマンがお腹へ入っていった
葵
「……まぁ、大丈夫ですよ!
それに、もしどっちかに絞れと言われたら私は迷わず部活を選びます」
「なんで?代表、かっこいいじゃん」
何言ってんだろ、俺
もし部活じゃなく代表を選んでしまったら……
きっと葵には会えなくなるかもしれないのに
葵
「でも、私は先輩と部活ができるこの1年を大事にしたいです
このチームに命を捧げたいんです」
ちょっと重いですかね、とこちらを向いて微笑む葵
夕陽が差し込み、彼女を茜色に染める
儚くて、綺麗で
俺は、胸いっぱいに込み上げてくるこの気持ちをどうすればいいのかわからず、ただ「そんなことない」といって笑うことしかできなかった