第58章 待っているもの
しかし。赤葦さんが常日頃冷静沈着なのはこの合宿中でわかったけど……
普通、1番のチームの得点源であるエースが不調であげるな、と要請して、それを受け入れることはあるのかな?
いや、私が見てきた中ではない、と思う
だってほら、エースに上げないなんて負けるのと同じじゃないか
あれが、練習試合だから?
そりゃ、そーだ
もし本当の試合でああなっても、無理矢理にでも木兎さんに打たせるだろう
他の部員も至ってふつうなのは、これが練習試合だから
そう思っていた。
だけど、違った
エースが不調で、まったく攻撃しなくても崩れない
逆に他の部員が生き生きとしてきた
そして、赤葦さんも強気だ
梟谷マネちゃん
「木兎ってさー
一見チームの柱の"長男"って感じだけど、実際のところ"末っ子"だよね〜〜
単体では最強だけど」
生川高主将さん
「梟谷は木兎が居なくても強豪と互角に戦える力があって、木兎が加わる事で強豪に勝てるチームになる……」
梟谷マネちゃん
「調子にムラがありまくりの木兎が多少凹んだって動じないもんね
それどころかちょっとイキイキし始めるのが梟谷だからね〜〜」
なるほど〜
繋心
「……梟谷は木兎が引っ張るチームというより
他のメンバー全員で木兎を引っ張るチームってことか……!」
ということは、きっと試合でも彼は凹むことがあるんだろうな
だから、みんな慣れた感じだったんだ
きっと、あのチームだからこそ
彼はやりたいようにやれるんだろうな