第56章 わたしたち
『なんだ!?あの長い助走は!!?』
『飛んだ……!!身長はコートの上で一番低いのに、打点は一番高い……!!!』
巻き上がる雄叫び
歓声の声
『今の、一番良かったんじゃない!?』
興奮気味に上気した頬で私に握りこぶしを突きつけてくる
それをゴツッと自分のと突き合わせてからハイタッチ
乾いた音
でも心地良い
テクニカルタイムアウトに入れば、仲間が私の頭をごしゃごしゃと撫でていく
強引だけど、ほっこりするものがあって
あったかい
無意識に天を仰いだ
眩しいライト
高い天井
「おきろー!!!」
葵
「………?」
突然の叫び声
あたりを見回す
見慣れた教室
そうか、合宿中だっけ
今日は最終日だった
日向が山口を起こしにかかる
どうやら昨日の夜のせいで寝坊したみたいだ
葵
「…………ねむ」