第56章 わたしたち

大喜びの木兎さんを無視し、赤葦さんは隣の海さんに手札を出した

海さんは悩むことなくカードを引いた
すると、赤葦さんが「え？」と声を漏らす

木兎さん
「なんだよ」

赤葦さん
「あ、いえ、なんでもないです」

海さんから手札をもらうのはクロだ

クロ
「海、今ジョーカー引いたろ？」

海さん
「ん？ああ、よくわかったな」

そんな会話をしながら、クロは無造作に一枚取り手持ちの札と合わせて捨てた
次に大地さんへ手札を出すクロ

大地さんはカードに手を出さず、顎に手を当てうーん、と唸る

大地さん
「さっき、本当に海はジョーカーを引いたのかな？
だって、さっきのは海に揺さぶりをかけただけだろ？」

クロ
「……よくわかったな」

なんなんだ、このババ抜き
多分、今までやってきた中で一番シリアスなババ抜きですよ


大地さん
「さっき心理戦が得意だって自分で言ってたからな
どんな出方するのか気になって見てたんだ」

クロ
「なるほど、相手にとって不足はないようだな」

大地さん
「ふふ………」

クロ
「ふふふ………」


こわいこわいこわい
なにこのババ抜き
ゲームの粋超えちゃってるよ！？


「ひいたよ、ほら」
そんな戦慄が駆け巡る空気の中、静かに、だが確かな声でジョーカーを上げる海さん

少しの微笑みがまた、こわい
そしてそのまま手札に戻した


赤葦さんは眉間にシワを寄せて言った

赤葦さん
「………このババ抜き、めんどくせぇ」