第55章 そして少年少女は気付かされるだろう
『4番!!』
兄の背番号が体育館に響き渡るように叫ばれる
ブロックに飛ぶ相手にものともせず、気持ち良いほどにアタックを決める、兄の背中
湧き上がる喝采
近所の人に「さすがエースねぇ!」と言われることが、まるで自分が褒めてもらっているような気がする
“エース”
コートでブイサインを送ってくれる兄に自分も送り返す
その背中が、自分の憧れだった
烏野高校という強豪に入った兄は毎日帰ってくるのが遅く、バレー一色のまま一年が過ぎた
兄とは毎日バレーの話をした
「ねぇ、今ってポジションどこ?
中学と同じ?」
「そうだよ」
「じゃあエースだ!」
「まあな!」
そして、月島は知ってしまった
兄が嘘をついていたことを
『……カッコ悪い』
たかが部活の事だったのにそれを兄の全てであるかのように月島は思ってた
結果、兄に不要な嘘までつかせた
でも、兄も多分信じようとしていた
がんばれば、そうなれると―――
月島にはわからない
どうして皆、そんな風にやるのか
そんな風にやれば、後で苦しくなる
そんなにも“エース”になる事が必死になる程の事だったのか
なぜ上を目指すのか
「絶対に“一番”になんかなれない
どこがで負ける
それをわかってるのに、皆どんな原動力で動いてんだよ!?」
「そんなモンッ
プライド以外に 何が要るんだ!!!」
“プライド”
まさか、こんな日が来るとは……