第55章 そして少年少女は気付かされるだろう
大地さんと西谷さんがぶつかり合いながらレシーブする
みんな、“あれ”以来少しピリピリしているような気がする
日向がエースのトスを取ろうとした、あの日――
葵
「………大丈夫、かな」
ポン、と肩に手を置かれる
見てみると菅原さんが真っ直ぐチームを見ながら「大丈夫」と言って私を見た
その顔は、真剣そのものだった
旭さんへのトスが上がる
しかし、咄嗟のカバーによりそのトスは日向と旭さんの居る位置の間を飛んでいて少し短い
あれではまた、ボールしか見ていない日向と、自分へのトスを打とうとする旭さんとでぶつかってしまう
前回は何もなくて済んだけど、ああいうことは大怪我になりかねない
日向が走りだそうと上空のボールを見つめながら前傾姿勢になる
あぶない、と本能的に感じた瞬間だった
日向の歩みが止まった
そして、チリリとするような気迫
それを発するのは、エース、旭さん
“俺のボールだ”
そう言わんばかりのオーラ
日向は気圧されたように足を止め旭さんを見ていた
日向だけじゃない
この空間にいる誰もが見たはず
葵
「さすが、大エース」
圧巻のスパイクを決めるその背中に、私は胸の中でフツフツと燃え上がるような、闘争心が襲った