第54章 境界線
そして、彼は私の頭に手をおいた
あったかくて、大きな手
この手に私は何度も救われた
大好きな、手
クロ
「服乾くまでそれ着といていいからな
じゃあ、俺は戻るから」
柔らかく笑って、彼は扉へ向かう
私の頭からクロの手が離れていく
私は、彼の背中が見えなくなるまでずっと見つめていた
名残惜しい気持ち
そして、唇のあの感触が忘れられない
心臓はさっきからバクバクとうるさいし、顔も火照るように熱い
クロのジャージは大きくて、袖なんて余りっている
クロの匂いがする……
床に座り込んで、私はたださっきのことを思い出しては赤くなっていた