第54章 境界線
少しクロが儚げに微笑んで、ふわりと私に近づいた
唇に、やわらかい感触
なにがどうなっているのか、一瞬わからなかった
私の顔は一気に紅潮していく
葵
「ッ!///」
半歩後ろに下がっても、クロはまた私にキスをする
目をキュッと瞑った
身体の全部の感覚が、唇に集中してるみたいだった
クロの唇が離れると、私もそっと目を開ける
そこには少しだけ顔を赤くしている、男の人の顔をしたクロがいる
クロ
「俺は幼馴染としてじゃなく、男としてお前が好きだ」
葵
「でも、私は……」
クロのことは好き
けどこの好きはなんだろう?
研磨だって、蛍のことも、菅原さんや大地さんのことも、みんな好き
でもこの好きってなんだろう
幼馴染として?
友達として?
仲間として?
それとも、異性として?
クロ
「……お前はバレー馬鹿だからな
そりゃ俺がこうするまでお前俺の気持ち気づかなかったろ?」
葵
「………私、わかんないよ……
今まで告白とか、されたことないし……」
クロ
「お前は俺の隣で笑ってればいい」
葵
「え?」
意味がわからなかった
入院していたときに退屈凌ぎで見ていた恋愛ドラマに出てくるヒーローは、必ずヒロインを惚れさせるーだとか、手に入れるーだとか、言ってたけど……
クロ
「惚れさせるーとか言うと思ったか?ざーんねん」
葵
「え、意味がわからないよ……?
ウソだったってこと?」
クロ
「ウソじゃねぇよ」
葵
「…………」
益々訳が分からなくなって頭の中がこんがらがっていく
クロはまた、私にキスをした
クロ
「……好きだ」