第54章 境界線
葵
「ありがと……クロ」
私は彼の背中に腕を回す
そして、キュッと抱きしめた
あったかい
クロ
「……おう」
クロもまた、同じように抱きしめ返してくれる
どこまでも優しく
どこまでもあったかくて
すごく安心する
クロ
「……葵? 泣いてんのか?」
葵
「………泣いてなんか、ないょッ」
クロ
「嘘つけ お前、肩震えてる」
葵
「クロ……
もし私が死んじゃったら……、クロ私のこと、忘れない?」
クロ
「忘れねぇよ」
葵
「ちゃんと、お墓参りに来てくれる?」
クロ
「毎日行く」
葵
「そこまでしなくても、いいよ……」
クロ
「ちゃんと行く
……けど、お前は俺より先に死ぬな」
クロの肩にシミがどんどん拡がっていく
彼の腕が私の頭に伸びてきて、大きなその掌で私の頭を優しく撫でる
それがまた、クロの肩にシミを作るのを助長する
葵
「クロが死ぬのは、ヤだ」
クロ
「じゃあ一緒に死ぬか?」
葵
「それもダメ
クロは、死んじゃダメ」
クロ
「それなら俺だって、お前が死ぬのはダメ」
葵
「………ねぇ、クロ
クロはどうして、所詮幼馴染なのに……
こんなにも思ってくれるの……?」
クロ
「俺にとって、所詮幼馴染っつー目で見れなくなってんだよ」
2人は自然に離れる
そして、私はクロの目を見て「どういうこと?」とかすかな声で問いかけた